2011/04/22

Amazonの書籍オンデマンド印刷サービスは"平面ブラウン管テレビ"?

4/20に「アマゾン、オンデマンド印刷サービスを開始」というニュースが出ました。

「出版社にデータがあれば、アマゾンが1冊でも2冊でも注文に応じて印刷して販売します」というサービス。これまでの出版物のビジネスプロセスを大きく変えることになるのは間違いありません。

従来、本といえば初版本を何千とか何万冊印刷し、初版の売れ行きによって重版するか絶版にするかを決めてました。これからは、お客さんから注文があった時点で必要部数のみを印刷して発送すればよくなるわけで、出版社にとっては売れるかどうか分からない本を印刷・製本するというリスクから解放されます。

特に、日本には「返本」という昔からのしきたりがあり、出版社は書店に本を並べてもらっても売れなければ返品されてました。今後は出版社は返本リスクから解放されることにもなり、出版社へのインパクトは非常に大きいと思います。

一方でこのサービス、「平面ブラウン管テレビ」状態にならないのかと思ったりもしました。
つい最近までのテレビはブラウン管で、画像を映しだすための画面は平面ではなく曲面だったのです。将来的には液晶テレビ・プラズマテレビになって画面が平たくなるだろうと見られていましたが、当時の液晶パネルはとても高く、また大画面にできませんでした。
そこで、電機メーカーがつくったのが平面ブラウン管テレビ。
売れました。
でも、売れたのであるメーカーは必死になって平面ブラウン管テレビを作り続け、気づけば世の中液晶・プラズマの時代。そのメーカーは液晶テレビの開発で後れを取ることになったのです。

平面ブラウン管テレビは「既存技術のブラッシュアップに注力してると、新技術の登場で一気に淘汰されてしまう」というイノベーションのジレンマのよい例ですが、このアマゾンのPOD(プリントオンデマンドサービス)はどうでしょうか。

出版物の大きな流れは「電子書籍」化です。AmazonさんもKindle売りまくって電子書籍化への流れを着々と進めています。未来のことは分からないですが電子書籍の普及により紙出版物が駆逐されてしまう日が来るのかもしれません。それまでの繋ぎのサービスのようにも思えます。

しかしこの書籍のPODサービスが過渡的なサービスであるとは僕は思いません。
紙の書籍はブラウン管テレビとは異なり、完全に市場から駆逐されてしまうことはありません。今後も紙媒体で読みたいと思う人は存在し続けるはずです。
そういった消費者向けの出版形態として、既存の大量印刷の出版モデルを駆逐した後に残るビジネスプロセスだといえます。

Amazonの上手いところは、商流の頭と尻尾のニーズをよく見ているところだと思います。出版社の課題、消費者のニーズの両方を解決することが真の流通業ですね。

好むと好まざるとに関わらず、大量印刷という時代が本格的に幕を下ろす日が近づいてきた、というのが実感です。
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パッケージ印刷・紙箱製造 トキワ印刷

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